最終章 やさしき魔女





フォルティア ルード・城下町

 宿屋に行き、ブリットに老兵が訪ねて来たと伝えるように言うと、上がって右の部屋が空いているからそこで休んで待っているように言われる。
 宿屋のサンペがやってきて話がついたと言う。モスコスの家の2階で落ち合うことになる。モスコスの家は城の入り口のすぐ、東側にある家だ。

 モスコスの家の2階で待っていると、ブリットがやってくる。
 城に入りたいから、手はずをつけてもらえないかと頼むと快く引き受けてくれる。レバスと王妃に目を光らせていたが、もはや、異界の侵略は明白だ。
 城内の様子を聞くと、国境に投入を始めた兵士は、レバスの怪しげな術により、魂を抜かれた兵士で、兵士たちに意識はない。命じられるままに恐怖も憐れみも感じずに行動する、恐るべき兵団だ。
 抜かれた魂は天球儀に吸い込まれているようだ。やはり、一刻も早く、天球儀を破壊するより、手はないか・・・

 ルード城へ



フォルティア ルード城

 入り口で兵士と、もめていると中からブリットがやってきて城内に入ることができる。



フォルティア ルード城・謁見室

 ルドルフ王は席にいない。どうするかと考えていると、ルドルフ王とレバスが現れる。今日の儀式でラウアールの波を呼び出せそうだと言う。
 レバスは天儀室で儀式をすると言って行ってしまう。
 ルドルフ王はうつろに目を開けているが、意識はない。

 ルード城の地下で武器を入手する。(ルドルフ王の左側から進む)
 ・シールドローブ
 ・正邪の槍
 ・戒めの盾
 ・氷雪の槍
 かぎがなくて入れない扉があるが、かぎを入手できそうもないので戻る。

 レバスの後を追って中庭まで行くが、扉にはかぎがかかっている。戻ろうとすると、グースとシャーラが山賊を連れてやってくる。
 グースがかぎを見つけてジュリオにくれる。
 ハックからの伝言をグースに聞かされる。天儀球の表面には成長した表皮がついているはずだ。破壊する前に、表皮をすべて取り除かなければならない。

 地下にあるかぎのかかった扉を開けて先に進む。



フォルティア ルード城・地下通路

 先に進むと、カジムが現れる。シフールのシャリネで倒したはずだったが、レバスの力で蘇ったようだ。
 そこへローディが現れる。
 ローディがカジムと戦っている間に先に進む。

 地下通路を迷っている兵士に会う。この通路はイザベルの塔につながっているらしい。天儀室はイザベルの塔の屋上からつながっていると言うことだ。

 さらに先に進むと、足場の悪い所で敵に待ち伏せされる。
 アルフが現れる。
 オルドスの大神官のところに行き、ラウアールの波のことを聞いたと言う。
 モリスンには内緒で来たらしい。
 アルフがここで敵を食い止めてくれると言うことなので先に進む。

 さらに先に進むと、今度ははさみうちにされる。
 モリスンが現れる
 オルドスで別れた時の様子が、白々しかったので、アルフに報告した後、ここへ向かったと言うことだ。やはり、アルフには内緒で来たらしい。
 モリスンがここで敵を食い止めてくれると言うことなので先に進む。



フォルティア イザベルの塔

 上のほうまで行くと、グースたちがやってくる。魔獣兵士が押し寄せてくるから先を急げと言われる。グースたちがここで敵を食い止めているから天儀球を壊して来いと言われる。

 部屋に入っていくと、レバスが待っている。レバスは言う。
 無数の想念を吸収した天球儀は今や物体でありながら生命を得て、最高潮にまで成長した。遅かったな。もはや、私が手を加える必要もない。儀式はすべて終了した。
 あとはラウアールの波が、この世界に現れるのを待つだけだ。
 なぜそんなことをしたか問いただすと、レバスは答える。
 お前たちが異界と呼んでいる我々の世界を救うためだ。魔女の海に浮かぶ魔女の島。お前たちはそう考えているようだが、現実には少し違う。そこに島などなく、あるのは空間の「ひずみ」なのだ。その場所で2つの世界はつながり、この世界と異界との往来を唯一可能なものとしているのだ。
 異界にもこの世界と同じように人間が生き、人々の営みがある。その人々の営みが、ラウアールの波によって崩壊しようとしているのだ。そのことに気がついたのは、いまから30年ほど前のことだ。我々の世界の人間は生まれながらにして魔法を扱えた。だが、それがアダになった。魔法を扱うさい、消化しきれなかった負の想念が、長年に渡って空間に蓄積され、手のつけられない怪物となったのだ。それがラウアールの波だ。

 デュルゼルが言う。自分の世界を救うために、他の世界を滅ぼしてもよいと言うのか?
 我々の世界でも様様な意見が出たよ。一部の者はこの世界に来て、それが果たして許される行為なのか自分の足で歩き、この世界を巡るものもいた。
 それが、魔女の巡礼・・・
 中には、白き魔女と呼ばれたゲルドのように、この世界の者が嘆きの想念を生み出さないようにと助言を残して旅をした物もいる。しかし、我々の結論はもう出ていた。ラウアールの波をこの世界へ追い出し、自らの世界のみを救うという道に・・・
 ステラが言う。天球儀に嘆きの想念を閉じ込めたのは、ラウアールの波が生まれた時と同じ状況をつくり、この世界に誘導する為だったのね。
 そういうことだ。ラウアールの波は、自分を育んできた嘆きの想念の波長を好む。この世界のほうが我々の世界よりも嘆きの想念を多く持てば、間違いなく、波はこの世界に打ち寄せる。その為にも、我々は非情にならねばならなかった。我々の世界の者が心に持つ嘆きの想念を捨てない限り、この作戦は成立しなかったのだ。

 レバスとの戦いが始まる。

 天球儀を破壊することになる。まず始めに、天球儀を包んでいるあの気持ち悪いのをはがさなければならない。まずは、ステラが爆弾で破壊することを試みる。しかし、爆弾では破壊することができない。そこへ、ローディ、アルフ、モリスンがやってくる。
 爆弾で破壊できないということを説明すると、モリスンが言う。恐らく、成長した天球儀の周囲は精神的な力により庇護されているのでしょう。物理的にも精神的にもそのどちらにも影響を及ぼす物があれば。真紅の炎のように・・・
 真紅の炎の爆発は、精神的にも浄化作用があると言われている。真紅の炎なら、恐らく・・・。
 ジュリオたちが真紅の炎を出すが、小さすぎるようだ。モリスンの提案で、魔法の力で真紅の炎を大きくすることにする。クリスとステラも手伝って魔法の力で大きくすることに成功する。ステラが投げようとすると、グースがやってくる。

 グースが任せろと言い、ステラは真紅の炎をグースに渡した。グースが真紅の炎を投げると、うまく命中して爆発する。

 天球の周りについている気持ち悪い物はうまくはがれる。
 次は、ジュリオの番だ。銀の短剣を天球儀に投げる。短剣は命中し、天球儀に閉じ込められていた魂は開放される。これで、ルドルフ王や国境に送られた兵士は、元に戻るだろう。



 そこへ、ハックがやってくる。ハックが言う。しまった、おそかったか・・・
 天球儀が残っていれば、他にも方法があったのだが・・・
 それより、急ぐんだ。ラウアールの波を呼び寄せている力は、まだ続いている。イザベル王妃が、まだ、どこかにいるはずだ。

 イザベル王妃を探すことになる。天球室を出ると、建物が崩れてきて、入口が塞がってしまう。シャーラと山賊たちが崩れた瓦礫を取り除くから、イザベル王妃を探せと言われ、先を急ぐ。

 イザベル王妃は屋上にいる。イザベルは言う。
 もう誰にも止められません。私たちの世界に代わり、この世界が終末の時を迎えるのです。
 しかし、あなた方が私を倒せば、術はその瞬間に解かれ引き寄せる力もなくなります。でも、だからと言って、災いから逃れられるかどうかは私にもわかりません。ラウアールの波が止まる可能性があるというだけのことです。私にも、育った世界の運命がかかっています。これまでのような戦いでは済みませんよ。

 イザベル王妃との戦いが始まる。

 イザベルを倒すが、ラウアールの波は止まらない。
 クリスの持つ、ゲルドの杖が輝きだし、ゲルドが登場する。

 ゲルドは、ラウアールの波と同化しようとしている。想念から生まれた怪物を無に返す手段は・・・。もはや、自らの魂と共に結びつき、最後の存在である魂を自分の手で消滅させるより他はない。
 ゲルドは、ラウアールの波と共に消えてしまう。


 ハックに、天儀室で言っていたもう一つの方法は何だったのかたずねると、ハックは言う。
 ゲルドの丘にデュルゼル殿が刻んだガガーブ暦の碑文があっただろ。あれを見て、もしやと思ってね。ラウアールの波とガガーブの大割れ目が奇妙に頭の中で重なったんだ。その答えがギドナの遺跡にあるような気がしてね。
 ・・・思ったとおりだった。ラウアールの波の脅威は、今回が初めてではなかったのだよ。今から992年前にも、ラウアールの波はこの世界に現れていたんだ。ジュリオをが口をはさむ。992年前って、ガガーブ暦が始まった年じゃないか。
 大地に刻まれたガガーブこそ、かつて牙をむいたラウアールの波の傷跡だったのだよ。クリスが口をはさむ。過去にも異界からラウアールの波が呼び寄せられていたの?
 いや、そうじゃない。ラウアールの波の元になった想念はこの世界で生まれ、それを当時の人々が異界に押しやったんだ。ギドナの遺跡に、その頃の人が残した碑文が残っていた。どうやら当時は、今より精神文明が発達していたらしく、頻繁に魔法が使われていたみたいなのだ。ギドナの遺跡に残された碑文には、ラウアールの波の災いから逃れる3つの方法が記されていたよ。ひとつは、ラウアールの波を別の世界に追い出すこと。かつて我々の祖先が使い、今また異界の人々がもちいた方法だ。
 もうひとつはラウアールの波が好む、嘆きの想念がこもった物体を利用して、封印する方法だ。天儀室で私が言いかけたのはこの方法なのだ。ラウアールの波を引き寄せる天球儀は、同時にこの世界にとっても切り札と成り得たのだよ。
 引き寄せられたラウアールの波は、必ず嘆きの想念を得ようとその身を凝縮させ、器の中へ侵入するらしい。そのときだけ、ラウアールの波は無力になるそうだ。
 モリスンが口をはさむ。天球儀の中にいるうちに結界を作り、封じてしまおうという方法があったのですな。
 でも、この方法はあくまで封印であって、ラウアールの波の力は永遠に残留されてしまう。いつまた封印が解けるかもしれない。しかも、嘆きの想念を犠牲にするので、魂を抜かれた人たちを元に戻すこともできないのだ。
 最後の方法は、負の想念の固まりであるラウアールの波を純粋な正の想念で浄化する方法だ。つまり、今、ゲルドが行ったことだ。
 ラウアールの波は、ゲルドと融合して完全に消滅した。この世界も異界も両方ともが、ゲルドによって救われた。

 ルドルフ王のところに行ってみることになる。
 デュルゼルに紹介される。よく我々を救ってくれたと言ってお礼を言われる。

 ブリット隊長がやってきて、報告する。兵士たちが意識を取り戻し、正気に戻ったそうです。もう、戦争が始まる危険もありません。

 ジュリオとクリスはラグピック村に帰ることになるが、ルドルフ王が馬車を用意してくれると言うので、乗って帰ることにする。

 ジュリオは、エスペランサーをデュルゼルに差し出す。デュルゼルは剣を受け取る。

 馬車の上で、デュルゼルからもらった手紙を読む。
 ジュリオ、それに、クリス。
 お前たちは本当によくやってくれた。自分たちがどんなに素晴らしく、良いことをしたのか、今は実感がないかも知れないが、お前たちは本当によく頑張った。
 すべて、お前たちのおかげだ。感謝する。
 この俺にしたところで、ドルフェスの塔に、お前たちが来なければ、たとえ、世界が滅んだとしても、この重い腰を、上げなかっただろう。
 我ながら、まったくザマがない。
 どんなことがあろうと、へこたれない。
 前向きに生きていくのが剣士の条件だと思いながらも、気がついたら運命を待つだけの老人になっていた。
 俺のことを宮廷剣士の鏡とか、希代の英雄だとか呼んでくれる者もいるが、そんなのは、テイのいい勘違いだ。
 俺のやっていた宮廷剣士などと言うものは、城の役人に毛が生えたようなものだ。
 志は、いつしか忘れ去り。気がついたらシガラミに縛られて、目の前しか見えなくなる。
 そうなっては、おしまいだ。
 英雄とは常に人々と共にあるべき物だと思う。
 それは、特定の者の思惑を守る物でも、戦いで名を馳せる武人でもない。誰よりも純粋に弱き者の心がわかり、前向きであり続けられる者のことだろう。
 俺なんかより、むしろ、ゲルドやおまえたちこそが英雄と呼ばれるにふさわしいのだ。この旅を忘れるなよ。英雄の心をもち続けろ。
 せっかく、ゲルドとお前たちが守りぬいた世界だ。間違った方向に進めないのも、次の世代を担う、お前たちの役目なのだ。

 さて、こんな話がある。
 お伽話でも読むようなつもりで読んでくれ。
 俺がまだ宮廷剣士になる前にことだ。剣士にあこがれる俺は、武者修行を気取って旅を続けていた。そんなときだ。
 帰った者のいない魔女の島からただ1人戻り、魔法の都オルドスを開いた大魔導師オルテガが、その地を離れて隠居したと耳にした。
 以前からオルテガには興味があった。もちろん魔法と剣では扱う物に違いはあるが、オルテガの極めた数々の魔法の話は、剣士が修行を積むのと近いものがあるからな。
 オルテガが大聖堂にいるあいだは、とても恐れ多くて会いになど行けなかったが、隠居したのなら話は別だ。俺は人づてにオルテガの居場所を探り、山間の村へ行き着いた。
 大魔導師オルテガはそこにいた。血の気の多いだけだった当時の俺にも、オルテガはやさしく接してくれた。俺はオルテガから様々なことを学んだ。果たして、どこまで俺がそれを活かし切ることができたのか、今になっても怪しいものだが・・・。
 オルテガを心の師と仰ぐ関係は、俺がルード城の宮廷剣士になった後も続いた。

 やがて歳月が経ち、イザベルがこの世界に現れ、しばらくして、ゲルドが現れた。この経緯については以前に話したとおりだ。倒された白き魔女の横には、1本の杖が転がっていた。俺にはその残された杖に、ゲルドの世界を憂う思いのようなものが込められているように思えてならなかった。
 俺はゲルドを埋葬した後、ゲルドの杖を持ち、オルテガの元を訪ねた。
 オルテガはその杖を見て驚愕した。巧妙に力を封じてあったが、杖に込められた力は予想を遥かに越えていたのだ。杖にはゲルドの意思そのものが吹き込まれていた。力を有する杖も両刃の剣と同じだ。使うべきときに、使うべきものが使用しなければ力は呪いと呼ばれることになる。
 俺はオルテガにゲルドの杖を託すことにした。オルテガは持てる魔法のすべてを駆使し、ゲルドの杖を封印して形を変え、力が容易には発動しないよう手を加えたのだ。
 その杖を、クリスが持つことになったと言う訳だ。ゲルドの想念が残るゲルドの丘で銀の短剣と並べたときに杖が発動するようしてくれたのはオルテガだ。その為にオルテガは魔法の力をほとんど失った。
 これでクリスの杖が、なぜ、あのような力を発揮したのかわかってもらえたことだと思う。この話だけは、どうしても伝えておきたかった。
 まあ、何はともあれ、お前たちは巡礼の旅を立派に終えた。たくさんの町を目にしたし、数え切れない人にもあっただろう。
 だが、これだけは言っておく。大切なのは、その経験をどう受け止め、どのようにこれからの生活に活かせるかだ。いくら貴重な経験を多くしても、自分の人生に活かせなければ意味がない。
 英雄の心をもち続けろ。
 いいか、いい大人になるんだぞ。

 なんだか説教臭くなってしまって申し訳ない。年寄りの戯言だと思って許してくれ。長い手紙になってしまった。この辺でそろそろ終わりにしよう。
 さっきローディがやってきた。お前たちを見送ったら約束どおり、頼みを聞いてくれとな。なあに、若い剣士の考えることは察しがつく。おれもそうだったからな。
 ジュリオに返してもらったエスペランサーが役に立ちそうだ。
 俺も年をとった。
 年寄りの冷や水と冷やかされるのもシャクだからな。ここらで引退するにはいい機会だろう。元気でな。
 今度、会うときがあれば、一緒に酒でも飲もうじゃないか。

 デュルゼル




フォルティア ラグピック村

 村に到着するが、人が誰もいない。
 もしやアロザで見た夢の通りに・・・。ログの姿を探しに行くと、夢で見たところと同じ場所に倒れている。クリスが杖でログをつつくと、ログは起き上がる。昨日、ルード城から使いが来てジュリオたちが帰ってくるから、ログは徹夜で準備をしていたと言う。
 西の原で歓迎の準備ができていると言うことで、西の原に行く。
 トロバが来ていて、キタラを弾いてくれる。

 ラップじいさんがやってきて話をする。
 ジュリオが言う。ゲルドは・・・。白き魔女は、この世界のために命を落としたけど、それで良かったのかなぁ・・・。後悔なんかしてなかったのかなぁ?
 それに、仲間から裏切り者扱いされる道を自分から選んだわけでしょ?
 だがきっと、辛いばかりではなかっただろう。おまえたちに聞くが、巡礼の旅はどうじゃった?
 ひどい目にもあったけど、楽しいこともたくさんあったと答える。
 それと一緒じゃろう。人は辛い思いをしても、楽しいと思える心がある。だから1度でも幸せだと思える瞬間があれば、その人の人生は幸せだったのじゃよ。たとえ、それが死んだ後であってもな。白き魔女が残した道を、お前たちが通ってくれた。
 ゲルドは後悔などしてはおらんさ。

 ラップじいさんに聞く。どうしてそんなにすごい人だってことをみんなに黙ってるの?
 これからは、修行を積んだ魔法使いが悪い竜を倒したり、腕っぷしの強い剣士が、剣一本で国王になるような時代じゃない。それで事が収まるような単純な世の中ではなくなりつつあるのじゃよ。これからは一人一人が自分の持つ才能を役立て、それぞれの暮らす場所でみんなのためになるよう頑張る。そうでなくてはいけないのじゃ。そのためには伝説の英雄などというものは邪魔なだけじゃ。これからは、大地に根をおろした力こそが必要なのじゃよ。ゲルドの心のようにな。

 二つの旅があった。
 昔、白き魔女と呼ばれる娘がティラスイールを旅した。
 異界から来た魔女は孤独な巡礼を続け、一筋の希望の道を残した。
 ガガーブの先に世界はなく、大蛇の背骨の果てにも世界はないと信じられていた時代の終わりに、ジュリオとクリスは巡礼の旅をした。
 2人は白き魔女の残した希望の道を通ってきた。
 道は20年の歳月を隔てた今もそこにあった。
 最大の災いラウアールの波。
 2つの巡礼の旅は多くの人々の力に支えられ災いの波から2つの世界を救った。
 ときにガガーブ暦992年
 ティラスイールに新世紀の足音が聞こえ始める、冬のことだった。


 白き魔女と呼ばれる娘がティラスイールを旅した。
 魔女の名はゲルドと言った。